記憶喪失(徒歩日本縦断#55)

深夜1時。道の駅近江母の郷のトイレの裏でひっそりテントを張って寝ていると、ゆっくり近づいてくる怪しい足音で目が覚める。

明らかにゆっくりすぎる(3秒に1歩くらい)足音と時折聞こえる女の人の呻き声のような音。それによだれを垂らすようなジュルジュルとする音。

「これはおかしい」

即座に目が覚めていつでも動けるようにテントの中で臨戦態勢。

やがてその足音はテントのすぐ横で止まって、ひたすら響く呻き声と謎の液体音。

怖かった。ただ怖くて、でも外を確認する勇気もなくて、ひたすら耐える。

その10分後くらいに突如その気配は途絶えて、そっと外を覗くともう誰もいなかった。

安心して2度目の眠りにつく

とほぼ同時に、今度はゆっくり目だがしっかりとした足音。その足音の持ち主はテントを覗き込むような影で迫ってきた。

「今度は確実に人だ」

これもまた怖い。なにを考えてるかわからない人かもしれないし、何かを盗みにきた人かもしれない。

「横石は起きてるぞ」

そう伝えるために、テントを開けるモーション音で威嚇した瞬間、即座に逃げていく足音。

10秒ほど間を置いて横石も外を見にいくと、一台の車が走り出していた。

これは確信犯だろう。明らかに荷物を狙っていた。

あいにく横石はすべての荷物をテントにしまっているので、強盗でもされない限り大丈夫だが、流石に明らかな確信犯で来られたことは日本ではないので(ヨーロッパで野宿してた時は数回ある、なんなら強盗も)これもまた怖かった。

というか立て続けに色々と起きすぎだよぉ…

精神が…

落ち着かない心臓をどうにか落ち着かせて、30分後に眠りに落ちる。

そして朝

こんなに朝の光がありがたかったのも久しぶりだ。

テントを開けると、ポツンとおにぎりが2つ

どうやらこれは朝のうちに

ツイッターのフォロワーさんがわざわざ届けてくださったらしい。

悪いことあれば良いこともある。

ありがたく自家栽培の美味しいおにぎりを朝ごはんとして頬張って、気を取り直した横石は朝7時に出発。道の駅の掃除のおばちゃんはゴミを持っていってくれるし、いろんな人に頑張れと応援していただけるし、夜とは打って変わって良いスタートを切れた

朝の琵琶湖は本当に海みたいだ

白波がたって、風が強くて…

琵琶湖には「海水浴場」がたくさんあるが、自転車日本一周してた時は「淡水浴場やろ!」なんてツッコミを入れながら走ってたけど、今なら海水浴場って名付ける気持ちわかるわぁ。これは海だわ…

カモだって波乗りを楽しんでいる。

波乗りをするカモを観れるのは日本で琵琶湖だけなんじゃないかな

そんな微笑ましい朝の琵琶湖を眺めながら歩いて5キロほどで琵琶湖岸道路を逸れて内陸の国道8号へ

次の街彦根に入ってから

しばらく歩くと

国宝彦根城が見えてくる

と、ここまでは8号もそこそこ楽しめたんだけど、それ以降の記憶がほとんどない。笑

そう。国道8号は滋賀の彦根を過ぎたあたりから、様々なお店や住宅が立ち並ぶ幹線道路になってしまうのだ。

今更ヤマダ電機を見せられても

「あ!ヤマダ電機だ!写真撮らなきゃ!」

とはならないし、

今更ファミレスを見ても

「あ!ファミレスだ!写真撮らなきゃ!」

とはならない。

ようするに死ぬほど単調な道のりが続いて、横石は半分無になりながら歩いていたため、ほぼ記憶喪失なのだ。

今、唯一残っている写真たちを見ると

「野焼きしてるー!秋だなぁ」

とか

「コスモスが満開や!素敵!」

みたいな、道端の感動を必死で追いかけていたんだけど、そんな、「なんとか今日の旅路を思い出に残すぞ!」なんて涙ぐましい努力も10キロほどで終わって、気づいたら午後4時を回っていた、、

そしてふと地図を見ると目的地まで残り4キロに迫っていたのだ。

無っていろんな意味ですげぇ…

だって既に34キロ歩いてるのに全く疲れてないもん。記憶もないけど。

いやでもさ、毎日毎日歩き続けるわけじゃん?そんな毎日感動の景色があるわけないし、むしろこういう単調さの方が歩き旅では当たり前なのかもしれない。大した山も川も海もなく、ただひたすら歩くだけ…そりゃあ人間そんなこと何時間も繰り返したら無にもなるよ。

なんて悪態もつきながら、少し反省。

せめて残り4キロは気合い入れて歩こう!!

てことで残り4キロ、ノリノリのルンルンで歩いてみると、すぐに旅の起伏が現れる

車から「がんばってーー!」と声をかけてくださる人が急に増えたり、色んな人に話しかけられたり、見違えるほど楽しくなる。

「そうか、多分無になるってことは背中が丸まってたんだな」

ノリノリで歩き始めた途端、背中はピンと伸びて、かっこよく歩けるようになるんだ。

そしてそんな姿を見て色んな人がきっと声をかけてくれるんだ。

せっかく歩いて旅をしているんだから、誰よりもかっこよく歩けるようになりたい。

そう思って、ますますノリノリで歩いていると、先程車から声をかけて頂いた京都ナンバーの方が大量の差し入れと笑顔を持って待っていてくれていた。

短い間だったけどとってもパワフルな方で、色々お話をして、こっちまで元気を頂いてしまった。本当にありがとうございました!

ますますルンルンでまた歩き始めて残り2キロ

次は目の前に車が止まっておじさんが握手を求めてきた。

「お!?ルンルン効果か?!」

なんて思いながら快く応じると

「生き別れた友に似てる」

と言い始め突然抱きしめられる

この辺りからちょっとよくわからなくなっていたけど、「あぁ、そういうこともあるのかな」なんて思いながら控えめにハグに応じる

その瞬間強く引き寄せられて、腕や首の匂いを嗅がれる。

そしてそのまま生温かいものが…

そう、吸われる勢いでキスされまくっていたのだ。

人間突然の出来事には対処できないことがよくわかった。

嫌だし、身体は完全に拒絶してるのに、突き放すことができない。

なすすべも無く放心状態で突っ立っていると、解放され、去っていくおじさん。

5分ほどその場に座り込んでしまった

力が入らないのだ

流石にこのまま腰が抜けたままじゃまずいと思って切り替える

「そうか、世の中色んな人いるもんな。勉強勉強」

そう割り切らないと、今にも吐きそうだった。

早く道の駅に着いてとりあえず腕と首を洗いたくて、急いで残り2キロを歩いてゴール。

良いことも悪いことも夜から激動だった1日。

最後は良いことで締めくくろう…

そう思って先ほどいただいた差し入れを開ける

大量の差し入れの中にはビールまで😭

本当にありがとうございました!!

ということで最後はビールで1人乾杯

久しぶりの生ビールはうまい。

道の駅の警備のおじさんとも仲良くなって、こころよく野宿の許可も頂けたので今日はぐっすり眠れそうだ。色んな出会いがあるけど、それ全部含めて横石の旅路。そう言い切れるように明日も歩こう

歩行距離 38キロ

滋賀県米原市→竜王町

総歩行距離 1823キロ

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