日本晴れ(徒歩日本横断#62)

62日目の今日は尾鷲市街のホテルで起床

前日のうちに台風14号は去り、その影響で尾鷲に通じるほとんどの道も通行止めになっていたがその規制も解除され、ようやく歩き出すことができそうだ。二泊もホテルをとってくださったくみこさんに感謝し、午前6時半に出発

そんな今日は台風一過で快晴

よく歌詞とかに「雨が降っても必ず晴れる」とかあるけど、それって当たり前だと思うじゃん?確かに当たり前だが、旅をしていて雨に打たれ続けた次の日の朝、晴れていると何にも変えがたいほどの幸福感がある。心も晴れ晴れと、まさに日本晴れの気持ちで、歩き出す

まずは尾鷲市街を抜けるとすぐに紀伊半島をぐるっと一周する国道42号最高地点の矢ノ川峠に差し掛かるが、こうも快晴だと普段はキツく苦しい峠でさえ楽しみだ。

この太陽に照らされて汗ばむ感じがとにかく今は嬉しくて、、、、

台風が来てからは4日ほど荒天が続きしばらくこの感覚を味わっていなかったが、やはり青空が見えるだけで幸せなんだから、横石の幸せのハードルはだいぶ低いらしい。

どんどん峠を登るが、やはり疲れより気持ち良さが圧倒的に勝る。台風は大気中のチリも吹き飛ばしてくれたので山の緑どころか木々の一本一本まで鮮明に見える

こっち見んな!!

峠の道中では猿軍団にも出くわす

思えば北海道では死ぬほどみていた野生動物も、本州に入ってからはほとんど見ていなかった。それだけ紀伊半島が自然豊かな証拠だろう

なんども言おう。ただただ気持ちいい

矢ノ川峠は標高450ほど上がるが、随分と山深く入ったところでほぼ頂上となり

一つ目の長いトンネルに差し掛かる

もうすぐ頂上で普段は「やっと終わるか…」って気持ちだけど、今は「まだ続いてくれぇ…」という気持ちになる。それだけ今日の紀伊半島は美しい。

そしてトンネルを無事にクリアし、また少し登って二本目のトンネル

このトンネルを抜ければいよいよ丸2日間停滞した尾鷲を抜けて

熊野市へ。

ここからは緩く海沿いまで20キロほどひたすら下っていく。

下りの道中は

集落の一切無かった尾鷲側とは違い、里山の風景が点在する、どこか懐かしい田舎道を駆け下りていく。

そして国道42号は峠の頂上からはしばらく大又川という清流に沿って続いていくのだが

きらきらゆらゆら

そんな大又川の透明度は地元の人にも「奇跡」と言われるほどの透明度。

しかも台風の後でこれだけの透明度を維持する川は日本中どこを探しても紀伊半島のこの一部分にしか存在しないという。

話を聞くと、紀伊半島の急峻な山から一切淀むことなく短い距離を流れていくので、このまさに奇跡の透明度の川が拝めるのだそう。

川といえばやはり四万十川やアルプスの川が有名だが、日本全国を何度も旅して思うのは「透明度」に関しては紀伊山地を流れる川が一番だということだ。この豊かな自然と里山の風景に横石はすっかり魅了されていた。

しかも前日まで大雨で思うように歩けなかった所からいきなりの絶景続き…

もう歩くのが楽しくて楽しくて…

隠れニッジー

山肌一つとっても、前日溜まった雨が溢れ出して大小の滝を作り出し、そこには虹が映り込む

普段見ることのできない、期間限定の滝…

そんな自然を満喫し、気づけば歩調は上がりまくって、沢山写真を撮るために止まって風景を眺めていたはずなのに午後1時には31キロを歩き長い峠道をクリア

もう今日は既に大満足の風景を拝めて幸せ気分で一杯だったが、台風をやり過ごしたご褒美はまだまだ続いていた。

そう、山→川→ときたら次は「海」

峠を駆け下りている時に突如姿を現した太平洋熊野灘に目が釘付けになる

そう。青すぎるのだ

まさに紀伊半島の南「南紀」に入ったと思わせてくれるような本州最南端に近づく南国の海

そのまま駆け下りて海沿いへと出ると

またこの青さ!

日本中旅をしていると一口に「綺麗な海」と言ってもそこには様々な種類があることに気づく

例えば日本海の透明で澄んだ海

沖縄のエメラルドグリーンの海

そしてここ南紀の海は、絵具で塗りつぶしたような、濃い青だ。

黒潮海流の影響もあるのだろうか、定かではないが、南国感あふれるこの清々しいほどの「青」は他のどの海でもなかなか拝むことはできない。

そして今日はこのまま今日の目的地までの18キロは山ゾーンを終えてひたすら海ゾーン。何と贅沢な1日だろうか、、合わせて50キロになるが、今日はとにかく歩きたかった。溜まった鬱憤を晴らすように、ただ歩きたい…そんな今の横石にとって海山川すべてが美しい快晴の紀伊半島は最高の舞台だ。

しかもさらにここからは世界遺産が半径3キロ圏内に3個も存在する、日本屈指の観光ゾーン

最初の奇岩が連なる鬼ヶ城こそ流石に日暮れになるので今回は見ることは叶わなかったが、後の2つは国道42号沿いにあるのでしっかり観光だ

まず一つ目はこちら

獅子の横顔に見えることから「獅子岩」と名付けられている世界遺産だ

まるで熊野灘に向かって雄叫びを上げているような雄々しい岩と美しく青い海

ちなみにこのカメラは超広角レンズなので少し獅子岩が小さく写っているが、実際はめちゃくちゃ迫力がある。

獅子岩は伊勢からこの熊野まで続くリアス式海岸の終点地点に位置し、激しい波の侵食で出来た形だ。横石も台風で散々身に染みたが紀伊半島は美しい分、厳しい自然に揉まれている土地なのだ。

そして世界遺産PART2は獅子岩からわずか600メートル先にあるこちら

「花の窟(はなのいわや)神社」という日本最古の神社だ。その歴史は日本書紀に遡り、全ての神の母と呼ばれるイザナミノミコトが祀られている

しかも御神体は

この神々しいほどに巨大な岩だ。

八百万の神と言われるのが神道で、その名の通り「すべての神々(八百万というのは数字を意味するのではなく沢山の神という概念を表す)は海山川を含めた身の回りの様々な自然に宿る」というのがその考え方だが、この巨岩はその信仰をそのままに、確かに神様が宿っていてもおかしくはない。というか宿っている。そんなピリッと背中が伸びるような気持ちになる御神体だ。

実際にこの御神体を目の当たりにすると、ゾワゾワと鳥肌が立って、思わず手を合わせてしまうような、そんな感覚になっていた。

しっかりと今歩けていること、そして美しい自然と共に旅をしていることに感謝し、先へ進む

ここから今日の目的地までは残り14キロ

前半とは打って変わって、ひたすら平坦な海沿いの道を歩く

次の御浜町に入ると、その名の通り七里にも及ぶ長い海岸線が続く「七里御浜」に入るのだが

日本の自然百選でもあり、渚百選でもある七里御浜はその称号に恥じぬ圧巻の海岸線がひたすら続く。

「ビーチ」というよりかは「海岸」という感じか、波の音と海風に身を任せて、しばらくこの海沿いを歩くことに。どうせ国道42号も海沿いなので迷うことはないだろう。

小一時間ほど時速3キロほどでのんびり歩くと、日が暮れてくる。七里御浜は東向きの海岸なので夕日を拝むことは叶わないが、日暮れのこの哀愁漂う感じがたまらなく切ない。

水平線はオレンジとピンクの中間のような優しい色に染まっていき、ひんやりした海風が1日の終わりを告げる

それと同時に国道42号に戻って、紀宝町へ。三重県最後の町だ。

今日はここから2キロ先の道の駅で野宿させてもらう

そして午後5時半、閉館時間の30分前に道の駅へ滑り込んだ。観光しながら50キロ歩いたのにこの速さは自分でも驚きだが、それだけ歩くのが楽しかったんだろうなぁ。あっという間に1日が過ぎた感覚だ。

そしてこの道の駅ウミガメ公園では、その名の通りウミガメを無料で見ることができる。

紀宝町は日本有数のウミガメの産卵地であるのだ。

自転車旅以来4年ぶりに訪れたが、何回見てもこの大きさに驚く。1メートルを優に超える巨体を優雅に翻すその姿は、そのまま海の大きさを教えてくれる。海にはこんなに大きな亀がいるんだって…

さ、今日はこのまま閉館時間を待ってこっそり端っこでテントを貼らせていただこう

道中車の方から美味しいパンも頂いたので、夜ご飯にさせていただき、充実した1日を振り返る

久しぶりに「あぁ!今日は歩いた!楽しかった」と素直に思える1日だった。なんなら今年の旅で一番充実していたかもしれない。

明日はどんな旅路になるだろう。紀伊半島に魅せられた横石は、もう明日にワクワクしているところだ。

歩行距離 50キロ

三重県尾鷲市→紀宝町

総歩行距離 2073キロ

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