終わらないノスタルジア(徒歩日本横断#65)

昨晩は潮岬にわざわざ東京から友人が来てくれて、温泉に連れて行ってもらった後、スーパーで酒と地元産の刺身などを買い込み、夕日を乾杯の合図に宴会が始まった

本州最南端の潮岬にはなんと海を眺められる絶景のロケーションに無料キャンプ場が併設されているのだ(串本町本当にありがとう…北海道に負けないこのキャンプ場は本州の誇りです)

キャンプ場にテントを張っていつでも安心して寝れる状況となればもう無敵。大好きなビール片手に2人で語り合う。

夕日が落ちる時間には、飲みながら海に沈んでいくまで2人で眺め

満点の星空が広がれば、寝転んでただひたすらに星を眺め、「あれが何座だろ!」なんて、言い合う本州最南端の夜。

なんて幸せなんだろうか

そして旅人でもある友人と語り合って、少し寂しくなる。それは旅の理想についてだ。

旅に出る前はこうやっていつでも夕日を眺めて、星の下で眠り、お酒なんかも嗜んで、なんていうのが理想の旅人像だと憧れていた。自分もそうなるものだと思い込んでいた。

けれども実際に旅をすると、夕日を眺めることなんてあまりない。星だって見れないことも多い。野宿する場所は道の駅や公園など、いつも「なるべく安全で快適な場所」になってしまうのが現実だ。

もちろんそれが一番ベストな選択なのは分かってる。理想通りにはいかないものだ。

だけども今、こうして2人の理想が叶った状況を味わって、最南端で寝そべって星を見ながら語り合うのは

「あと何回、こんな旅ができるんだろうなぁ」

結局現代の旅人は、文明から離れているようで、誰よりも文明を求めている。

薄々気づいていたけれども、なかなか認めたくなかったことだ。

気づけば5年間続けてきた旅路も今回で最後。

どう頑張っても文明とはサヨナラできないけれど、そんな自分を受け入れた上でも、なるべく今まで以上に、旅路の中で出会う夕日を眺めて、星を眺めて、海を眺めて、少しずつでもあの日思い描いていた理想を体現していけたらなぁ。(もちろん今までだって誰よりも「旅」をしてきた自信はある。けれど今以上に理想の「旅」を追いかけたい。だって最後だもん)

そして朝、のんびり7時に起きてから2時間ほどぐだぐだと語り合っていよいよ別れの時間だ

大切にしていた旅の理想をまた一つ、2人ともこの場所で叶えられて良かったなぁ。

「本当にありがとう。来てくれたおかげで素敵な思い出がまた一つできた」なんてセリフは男同士の別れには似合わないので、心の中に留めておいてグータッチで友人の車を見送る。あいつはこの日のためだけに東京から来て、今日また帰るのだ。ただでさえ横石に会いに来てくれたようなものなのに、酒も飯もご馳走してくれて、「本当にありがとう」以外に言葉はないよなぁ。漢気に余計な言葉はいらないよな。

ハイビスカス咲き乱れる本州最南端の海でまた1人になった。なぜか今日はやけに寂しい。こんなこと長旅の中でもほとんど初めてだ。胸の奥がずっとざわざわする。

まぁそりゃそうか。あんなに自分の理想とする幸せな旅の夜を、気の合う友人と過ごせたんだもんなぁ

そう納得は出来るけど、寂しいものは寂しい

ただいくら寂しくても、1人で旅をする道を選んでいる以上、やるべきことは「進む」こと以外にはないのだから。この寂しさも全部楽しんでやろう。

寂しさに浸って止まっているよりも、それを受け入れて前に進む。いつだってそういう道を自分は選んできたはずだから。

今日も快晴。寂しさを振り払うように、目の前の道をひた歩く。スタートは9時と遅くなったがしっかり36キロ歩く予定だ。道はひたすら海沿いなので段々と気分も晴れ晴れとしてくる。青空と海のコンビは無敵だなぁ…

最高気温は28度。やはり本州最南端とだけあって吹き込む風も南国風な気がする(気がする)

そして海沿いに細かいアップダウンは付き物

一つ小さな港町に入って、また小さな山道に入ってを繰り返す

この細かいアップダウンが自転車だときつかったけど、逆に歩きだといい感じのスパイスになって捗るだよなぁ…海では潮風、山では草の匂い、これがまたたまらんのよぉ〜。

絵になるなぁ
ひとりぼっち恐れずに
生きようと夢見てた
寂しさ押し込めて
強い自分を守っていこう

それにしても清々しいほどに綺麗な海だ

こういう海が綺麗に見える小さな港町の古い民宿に1ヶ月くらい住んでさ

窓を開けたら涼しい潮風が入ってきて

風鈴なんかつけてみて

お気に入りの本を何冊か持っていって

何をするわけでもなく、ただ浜辺に座って

野良猫と遊んで

なんの生産性もない暮らしをしたいなぁ

なんて思ってみたりしたっけなぁ

ただその場所それ自体を楽しむ

それもまた立派な旅だよね

当たり前だけど丸いな、広いな、大きいな

今日スタートした本州最南端潮岬を境に今までの紀伊半島は南へ進んでいたが、これからは折り返して北へ進むようになるので午後からは常に太陽が体の左側を照らし出す。海は余計にキラキラして、かなり眩しい。

ちなみに今日の道のりはかなり秘境で、25キロ歩いても一軒のコンビニもなければ、日陰さえない。

ただ休憩もしたくならないほどに、「もっと歩いていたいなぁ」と思えるほどに、紀伊半島の海は魅力に溢れている。

少し寂しい小さな港町にも

それぞれ味があって

ぷかぷかと桟橋にくくりつけられた小舟さえ

一つの風景としてそこにある

みんなが見にいく「観光地」もいいけれど

やっぱりこういうどこにでもある風景が好きだ

誰も見向きもしないような、当たり前にある美しさを、誰よりも感じるために今こうして歩いて旅をしている。

紀伊半島のどこか懐かしいノスタルジー溢れる港町を歩くとそんな大切にしていることを思い出させてくれる。

「急ぐのもいいけど、たまにはのんびりな」

「なぁなぁでいこう」

そう言われてる気がする

気付けば日はすっかり暮れかけて

いく先がオレンジに染められた頃

もう目的地の道の駅はすぐそこなので、今日はゆっくり夕日を眺められる場所を探そう。

そう思って降りた海岸で、ただ日が暮れるのを眺める

打ち寄せる波が石を動かしぶつかり合う音が心地いい。こういう時間だよね、大切にしたいのは。


当たり前に陽が昇って

当たり前に空は広くて

当たり前に海はキラキラしていて

当たり前に川は流れて

当たり前に山は色づいて

当たり前に陽が落ちて

当たり前に星が出る

そういうものを、誰より大切にしたい

その当たり前を本当に大切に出来た時こそ、愛おしく思えた時こそ、長い5年間の旅路の本当のゴールで、自分の理想が叶う瞬間なのかもしれないな

10人が同じ夕暮れの海にいるとして、その10人の目に映る風景は同じだけど、感じ方一つで、誰かにとってはただ1日が終わるだけで、また別の誰かにとっては一生忘れられない美しい夕日になるかもしれないってことだと思うんだ…

歩行距離 36キロ

和歌山県串本町→すさみ町

総歩行距離 2181キロ

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101 件のコメント

  • frolep rotrem へ返信する コメントをキャンセル